『僕は君たちに武器を配りたい』 瀧本哲史

 ツイッター上で話題になっていた瀧本先生の本。本屋で認知したのは作者が瀧本先生だと分かる前で、いい意味でも悪い意味でも目立つ表紙が購入を妨げていたのを覚えている。おそらくメインターゲット層は大学生、及び20代の若者という設定だろうが、馬鹿にしてんの?とイライラしてしまうほどわかりやすく書かれているので、一気に読むことができた。以下、読書メモ。

 

僕は君たちに武器を配りたい

僕は君たちに武器を配りたい

①勉強ができてもコモディティ

  • 勉強ブームの陰には「不安解消マーケティング」が存在する。
  • インターネットによって、知識獲得コスト、教育コストが激減し、日本人の競争相手はもはや日本人だけではなく、世界中すべての人。
  • コモディティ化」とはある商品が個性を失ってしまい、消費者にとってみればどのメーカーのどの商品を買っても大差がない状態になること。個性のないものはすべてコモディティであり、コモディティ化するのは商品だけではなく人材もコモディティ化する。一方、「スペシャリティ」とは「ほかの物(人)では代替することがでいない唯一の物(人)」であり、概念としてコモディティの対義語である。
  • 「努力をして経験値を積み、お金を貯めて武器をそろえれば、立身出世ができる」というのはオンラインゲームの世界観であり、現実世界ではこの成功ルールは通用しなくなってきている。
  • 生き残るには、コモディティな人間にならずスペシャリティな人間になること。

②「本物の資本主義」が日本にやってきた

  • 資本主義は一部の「頭のいい人」ではなく、「より安くよりいい商品」を作る人間が社会を進歩させるシステム。
  • 「国がどうにかしてくれる」と状況が変化するのを待つ姿勢ではダメ。今後は、個人レベルでビジネスモデルを変える、または新たなビジネスモデルを作り出すということにチャレンジしなければ、多くのビジネスマンにとって生き残ることは難しくなっていく。

③学校では教えてくれない資本主義の現在

  • ほとんどの学生ベンチャーが失敗するのは、「コモディティ会社」を作ってしまうから。だからこそ学生は、卒業後すぐに起業するのではなく、一度就職して社会の仕組みを理解した上で、コモディティから抜け出すための出口を考えながら仕事をしなければならない。
  • 現役学生が起業するのは「高学歴ワーキングプア」への近道。
  • 40代、50代の役員が多い会社は危険。生産性の低い社員に高給を払う=若者から搾取している。

④日本人で生き残る4つのタイプと、生き残れない2つのタイプ

  1. 商品を遠くに運んで売ることができる人(トレーダー)
  2. 自分の専門性を高めて、高いスキルによって仕事をする人(エキスパート)
  3. 商品に付加価値をつけて、市場に合わせて売ることができる人(マーケター)
  4. まったく新しい仕組みをイノベーションできる人(イノベーター)
  5. 自分が起業家となり、みんなをマネージ(管理)してリーダーとして行動する人(リーダー)
  6. 投資家として市場に参加している人(インベスター=投資家)
  • このうち、トレーダーとエキスパートは今後生き残るのが難しくなっていく。

⑤企業の浮沈のカギを握る「マーケター」という働き方

  • マーケターとは新しくない要素の組み合わせで「差異」を作り出せる人のことであり、これからのビジネスではこの「差異」が大きな意味を持つ。しかし、企業や商品で「差異」を作り出すことは難しい。
  • ターゲットとなった顧客が共感できる「ストーリー」を作ることができれば「差異」を生み出すことができる。
  • 「信者」を作るのが成功するビジネスのポイントである。一方、「自分の頭で物事を考えない人(≒信者)」は搾取される。

⑥イノベーター=起業家を目指せ

  • 自分の働く業界について、ヒト、モノ、カネの流れを徹底的に研究するべきであり、「徹底的にパクる」ことと「逆の発想」がイノベーションを生む。
  • 「仮想敵」がいる市場を狙え。
  • 「将来その会社を叩き潰すため」に就職しろ。

⑦本当はクレイジーなリーダーたち

⑧投資家として生きる本当の意味

  • 投資家としての頭の使い方を学ぶ必要があり、リスクの考え方がそれの最たるものである。
  • 「ローリスクより、リスクがとれる範囲のハイリスク・ハイリターンの選択肢をたくさん選べ」
  • 「投資の機会はなるべく増やせ」
  • サラリーマンとは知らないうちにリスクを他人に丸投げするハイリスクな生き方であり、住宅ローンはリスク管理できない人が搾取されるもの
  • 同じように、機関投資家個人投資家をカモにしているので株式投資は「損して学ぶ」スタンスで。

⑨ゲリラ戦のはじまり

  • 公開されている情報からでも、普通の人が嫌がる「一手間」をかけることで大きな成果を得ることができる。
  • 大学では自由人になるための「リベラルアーツ(教養)」を学べ。
  • TOEIC900点だけではコモディティ人材だが、スペシャリティな人材でも英語ができないと、ビジネスチャンスを逃すこともありえる。

 

 瀧本先生が俺にくれた武器の中でもっとも有用だったのは、学生が起業しても「コモディティ企業」を作ることが多いので失敗する、ということ。他は、このインターネットの世界の中で過ごしてきた中で、何度も見かけ、使い古された武器ばかりだった印象を正直なところ持った。あと、「コモディティ化」は今後、意識高い学生によって使われる頻度が増える言葉になりそう

 

 しかし、瀧本先生は「本物の資本主義」がなんであるかについて、明言を避けている。当たり前だ、「本物の資本主義」は何であるかの説明は「本物の本物の資本主義」の時代がくるまできっとできない。「昭和」を説明できるのは「平成」がやってきたからであり、「昭和」の真っ最中には「昭和」がなんであるか、明確に説明することは誰にもできなかっただろう。個人的にこれをオススメする層は意識高いことをやりたい学生であり、意識高いことしたくないけどこういう話が気になる興味あるという人には、『残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法』(橘玲をオススメする。