『7割は課長にさえなれません』 城繁幸

@w_qwertyくんから貰いました。ありがとう。

7割は課長にさえなれません (PHP新書)

7割は課長にさえなれません (PHP新書)

  • フリーターが正社員になれない理由は、企業がフリーターなどの経験者の採用に消極的であるため(特に大手ほどこの傾向は強い)。そして企業がフリーターからの採用に消極的である理由は、日本企業の一般的な賃金体系がいまでも年功序列であり、年齢をベースにしているため*1
  • 貯金好きという国民性からもわかるように、日本人はリスクに対して保守的で、企業家精神が言われることが多く、この傾向は21世紀でも健在で「終身雇用を希望する」新人の割合は過去最高を更新中。日本で起業が少ない理由は、若者が、相変わらず起業が新卒至上主義を捨てておらず、そこでこけるとどうなるか、少し上の就職氷河期世代を間近に見て、よくわかっているため保守化しているからである。つまり若者は企業するとう夢をあきらめて、組織に埋没していく。
  • 日本企業が女性を差別したがる理由は、男性労働者のほうが長期にわたって勤続するからである。さらに、雇用調整手段のひとつとして女性従業員を使う必要もあった。終身雇用があり続けるかぎり、この国の男女格差は永遠に残り続ける。
  • 1990年入社の大卒者で課長以上に昇格している人間が、たったの26パーセントしかいないというデータがある。つまり、約7割の大卒正社員が生涯ヒラ社員。
  • 現在、表向きは年齢を採用基準にしてはならないが、依然としてそれは存在する。かつてこの国には「35歳転職上限説」と言われるものがあったが、それはいまも変わらず存在しつづけている。
  • 「ママ、博士って人を採用したら、国が500万円くれるらしいよ。ところで博士ってどんな悪いことした人なの?」「それはね、勉強しすぎて歳をとってしまった人たちのことよ。しんちゃんは、そうなってはいけませんよ」「うん!わかったよママ!ぼく、博士なんかにはならないよ!」
  • 日本における学歴とは、偏差値証明書のようなもで、要するにポテンシャルの目安として機能し、それをもとに身分制度の枠組みに割り振られていくことになる。「上位カーストへのパスポート」とまではいえないが、「入社試験の受験票」くらいの価値は、いまでも学歴は保っている。
  • 個々数年、コミュニケーション能力や協調性が決まって求められる資質としてあげられるのは、日本企業におけるキャリアパスは、管理職としてのものしか存在しないので、要するにマネージャーの資質を求めている*2わけだ。
  • 「少なくとも自分は平均以上に優秀であるはずだ」と自負する者にとっては、日本企業は割に合わない人生の投資先だ。そして、そう判断して外資をめざしたり、日本企業を三年で辞める若者が増加しているということは、今後の賃金カーブの低下を予想する人間がふえているということだ。もちろん「自分はつねに平均以下だ」と割り切っている人間とっては、終身雇用はいまも変わらず魅力的な精度である。
  • 雇用調整助成金制度*3は一見すると労働者に優しいシステムに思えるが、この制度が優しいのは職に就いている正社員だけだ。彼らがしがみつくのを助けてくれるわけだから、すでに失業中の失業者、これから世に出る若者に対しては、むしろ敷居を引き上げる結果となる。
  • これからの道は二つある。一つ目の道は、基本的には現状維持であり、大きな変化は生じない。あくまでも従来の長期雇用をベースとし、長く勤めれば勤めるほど偉いとされる。二つ目の道は、労働市場の完全な流動化である。具体的には、正社員に対する解雇規制、労働条件の不利益変更規制を緩和し、処遇の柔軟な見直しを可能とする。これによって、3300万人の正社員と、1600万人の非正規雇用労働者が自由競争することになる。
  • 多くの日本人は、日本型雇用によって守られる側ではなく、むしろさまざまなかたちで搾取される側である。それは一見すると目に見えないため、自分が不利益を受けているとは気づいてない人も多い。
  • 「彼ら非正規雇用労働者は、あなた方、中産階級がこれまでどおり生きていくために、クビを切られているのですよ。同情してみせるのはいいが、ではあなた方は彼らのために何ができるのですか?」という根本的疑問を感じたのは筆者だけではないはずだ。
  • 身分制度を変えるには、身分制度に苦しむ人自身が正しい理解をもたなくてはいけない。とくに、まだまだ先の長い若者は、改革の先頭に立つべきだろう。


関連する本

若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来 (光文社新書)

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*1:おおよその(賃金)相場は年齢で決まっているため、(たとえば)30歳なのに正社員歴のない個人は「割に合わない」と判断され、敬遠されてしまう。

*2:コミュニケーションの苦手なマネージャーはありえない。

*3:詳しくはここ。「雇用を守るためには 雇用調整助成金」

『自分の中に毒を持て』 岡本太郎

  • 人生は積み重ねるべきものではなく、積みへらすべきもの。財産も知識も、蓄えれば蓄えるほど、かえって人間は自在さを失ってしまう。過去の蓄積にこだわると、いつの間か堆積物に埋もれて身動きができなくなる。人生に挑み、本当に生きるには、瞬間瞬間に新しく生まれかわって運命をひらくべき。
  • ふつう自分に忠実だなんていう人に限って、自分を大事にして、自分を破ろうとしない。社会的状況や世間体を考えて自分を守ろうとする。ゆえに、自分に忠実に行きたいなんて考えるのは、むしろいけない。そんな生き方は安易で、甘えがある。ほんとうに生きていくためには自分自身と闘わなければだめ。
  • 自分自身の最大の敵は他人ではなく自分自身。自分をとりまく状況に甘えて自分をごまかしてしまう、そういう誘惑はしょっちゅうある。だから自分をつっぱなして自分と闘えば、逆にほんとうの意味での生き方ができる。
  • あっちを見たりこっちを見たりして、まわりに気をつかいながら、カッコよくイージーに生きようとすると、人生を貫く芯がなくなる。そうじゃなく、これをやったらだめになるんじゃないかということを、まったく自信がなくてもいい、なければなおのこと、死にものぐるいでとにかくぶつかっていけば、情熱や意志がわき起こる。
  • プライドというのは絶対感だ。他に対してプライドをもつということは、他人に基準を置いて自分を考えていることだ。相対的なプライドではなくて、絶対感をもつこと、それが、ほんとうのプライドだ。このことを貫けなかったら、人間として純粋に生きてはいけない。
  • ほんとうに生きるということは、いつも自分は未熟なんだという前提のもとに平気で生きることだ。
  • 「いずれそうします」や「昔はこうだった」なんて言わないこと。過去にこだわったり、未来でごまかすなんて根性では、現在を本当に生きることはできない。
  • 自信なんてものはどうでもいい。そもそも自分を他と比べるから、自信などというものが問題になってくるのだ。他と比較して自分をきめるなどというような卑しいことはやらない。ただ自分の信じていること、正しいと思うことに、わき目もふらず突き進むだけだ。

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