『スヌープ!あの人の心ののぞき方』 サム・ゴスリング

スヌープ! あの人の心ののぞき方

スヌープ! あの人の心ののぞき方

部屋に残される三種類の手がかり

  • 部屋にはパーソナリティが表現されている。人とスペースをつなげているのは、「アイデンティティ・クレイム」「感情レギュレーター」「行動のかす」という三つのメカニズムである。
  • この三つのメカニズムは互いに独立するものではなく、どの手がかりにどのメカニズムが働いているのか、はっきりしないこともある。

アイデンティティ・クレイム

  • アイデンティティ・クレイムは、自分に向けられる場合と他者に向けられる場合があり、それぞれが違う心理的機能を持っている。
  • 他者に向けられたアイデンティティ・クレイムは、人にどう思われたいのか示している。意図したメッセージが受け手に理解されることが大事なので、他者に意味の通じる物が使われる。
  • 自分に向けたアイデンティティ・クレイムは、自己に対する見方を強化する。そしてこの中には、他者には意味がよくわからない物もある。
  • 他者に向けているか、自分に向けているかを見抜くには、位置に注意を払うのが大事である。アイデンティティ・クレイムの心理的機能は、位置で決まる。でも現実的には、どちらに向けているのかよくわからないこともある。

感情レギュレーター

  • 人が自分の周りに置く物や、つくりだす環境の多くは、アイデンティティを主張するためではなく、とりわけ感情や思考をうまく操るためにある。「感情を調整する物(レギュレーター)」のおかげで、過ぎ去った幸せなひとときを思い出したり、大事な仕事に集中したりできる。
  • 感情の調整によく使われるのはバスルームと音楽である。個人用のバスルームは、プライバシーがあって自分以外の誰も入れる必要がないことから、心の避難場所になることがある。音楽は、感情を調整する手段として広く普及しているし、自由に選択できる。だからどんな音楽を選ぶかが、パーソナリティを知る手がかりとして役に立つ。*1
  • 逆に、居住スペースにはあまり感情レギュレーターはない。その例外としては、啓発ポスターがある。ポスターは目で見る自家療法なのだ。

行動のかす

  • 「行動のかす」とは、日常の行動が環境に残す物理的な痕跡のことである。ときには、行動しないせいでかすが残されることもある。痕跡を残すような行動のかすは、人の特徴や価値観や目標について多くを語ってくれる。
  • 行動のかすから推測しようというのは、一種の非影響的測定法*2である。
  • くりかえされる行動にパーソナリティは現れる。ときどきや気まぐれでおこなう行動よりも、くりかえす行動のほうが明らかに多くの痕跡を残す。そして、寝室やオフィスにはこのようなくりかえされた行動の痕跡が豊富にあることが多く、どんな人かを知るのに最適の場所である。
  • ゴミは行動のかすがもっともよく見つかる場所の一つである。ゴミ箱に入っている物は、特に二つの理由で役に立つ。一つ目は、捨てたアイテムのことは意識しなくなるので、持ち主はそれに手を加えて印象操作しようという気にならない。二つ目は、ゴミ箱の中身にはいつかやろうと思っていることではなく、本当にした行動が反映される傾向がある。
  • やろうと思っていることとやったことの違いから、新しい類の行動のかすが見えてくる。つまり、物理的なスペースでは、過去におこなわれた行動がわかるだけではなく、これからの行動の手がかりも見つかる可能性がある。

ビッグ・ファイブ

  • ビッグ・ファイブとは、経験への開放性*3、誠実性*4、外向性*5、調和性*6神経症的傾向*7のこと。
  • ビッグ・ファイブから、特性をいくつかあわせ持つ人達のグループをつくて「タイプ」にすることができる。また、そのカテゴリーの範囲はものすごく狭い上に、きちんと理解しないと勘違いのもとになる。

経験への開放性

  • この傾向が強い人は、規範や慣例を疑ってかかることをおもしろがり、アイディアをあれこれ考えるのを好み、想像力が豊かである。開放性が高い人物の代表例は、レオナルド・ダ・ヴィンチ*8
  • 開放性が持つ面は、想像力、芸術への関心、情動性、冒険心、知性、精神的自由主義である。また、開放性の高い人がいそうな場所は、本屋の哲学の棚の前。

誠実性

  • この傾向が強い人は、隙がなく、頼りがいがあり、勤勉で、秩序を好む。気が散りにくく、計画性がある。誠実性が高い人物の代表例は、ロボコップ*9
  • 誠実性が持つ面は、自己効力感、秩序正しさ、義務感、達成努力、自律性、用心深さである。また、誠実性の高い人がいそうな場所は、色別に整理できるファイルを売っているオフィス用品店の通路。

外向性

  • 外向性が持つ面は、友好性、社交性、主張面、活動水準、刺激追求、陽気さである。また、外向性の強い人がいそうな場所は、パーティーのど真ん中。

調和性

  • この傾向が強い人は、面倒見が良く欲がない。思いやりがあってやさしい。寛容さ、共感、親切心を体現している。
  • 調和性が持つ面は、信じやすさ、道徳性、愛他心、協力的、謙虚さ、同情である。また、調和性の高い人がいそうな場所は、アザラシの赤ちゃんを救う現場。

神経症的傾向

  • この傾向が強い人は、すぐにイライラしたり動揺したりするなど、感情の変化が激しい。
  • 神経症的傾向が持つ面は、心配性、怒り、抑鬱、自意識、極端さ、脆弱性である、また、神経症的傾向の高い人がいそうな場所は、大事な会議の前の晩、眠れなくて何度も寝返りをうつ現場。


人を深く知るということ

  • 人を深く知るには三段階のプロセスがある。第一段階は特性を知ること。第二段階は個人的関心事*10を知ること。

随時更新予定。

*1:実際、音楽の効果は強大なので、心理学の実験で被験者の気分を変えるために利用されることもある。

*2:unobtrusive measure http://www.socialresearchmethods.net/kb/unobtrus.php 

*3:openness

*4:conscientiousness

*5:extraversion

*6:agreeableness

*7:neuroticism

*8:対照的に、型に嵌まりがちな逆の傾向の人は、抽象的なことよりも具体的なことを好み、未知のことよりも既知のことを好む。

*9:ネガティブな面として、神経質なほど完璧主義になったり、過労に陥ったりすることがあり、極端な場合は、堅苦しくて退屈な人だと思われかねない点が挙げられる。

*10:まずは役割、そしてスキル。さらには価値観。