『成功と幸せのための4つのエネルギー管理術―メンタル・タフネス』  ジム・レーヤー

成功と幸せのための4つのエネルギー管理術―メンタル・タフネス

成功と幸せのための4つのエネルギー管理術―メンタル・タフネス

フル・エンゲージメント
  • すぐれたパフォーマンスを引き出す鍵は、「時間」ではなく「エネルギー」にあり、パフォーマンス、健康、幸福を支えているのは、巧みなエネルギー管理術である。
  • フル・エンゲージメントには、4種類のエネルギーを利用することが必要となる。それは肉体面のエネルギー、情動面のエネルギー、頭脳面のエネルギー、精神面のエネルギーであり、4つは互いに密接に関連している。
  • エネルギーは使い過ぎても、使わなくてもなくなってしまう。エネルギーの消費と回復のバランスをとることが肝心である。また、エネルギーの貯蔵量を増やすには、トップアスリートのようにトレーニングの中で自分の限界を超えて頑張ることを体験する必要がある。
  • ポジティブなエネルギーの儀式*1は、フル・エンゲージメントとすぐれたパフォーマンスを持続させるための鍵である。
  • 生活を変えるには、「目標を設定する」「真実と向き合う」「行動を起こす」という3段階のステップを経る必要がある。3つすべてが必要で、どれもひとつだけでは機能しない。
ストレスと回復のバランス
  • 人間にとって最も基本となるのは、エネルギーを消費し、回復することである。これを「往復運動」と呼ぶ。「往復運動」の逆は、「直線性」である。回復の機会をもたずにエネルギーを消費しすぎたり、エネルギー消費を十分におこなわずに回復の機会ばかり持つことを指す。
  • 情動面、頭脳面、精神面におけるエネルギー量は、肉体面のエネルギー量を増やすときと同じ原理で増やしていく。その原理とは、ふだんの限界を超えるストレスに計画的に自分をさらし、そのあとに適切な回復の機会を待つことである。
  • エネルギー量を増やすには、長い目で見た場合のメリットを考えて、短期的な不快感にすすんで耐えることが必要である。ストレスがあってこそ、成長できる。
肉体のエネルギー
  • 肉体面のエネルギーは生活を支える根本的な原動力であり、それは酸素とブドウ糖の相互作用によって生まれる。肉体面のエネルギーを制御する最も重要な二つの要素は、息をすること*2と食べることである。無論、睡眠も大切である。
  • 肉体面のエネルギーは、感情をコントロールする、集中力を保つ、想像力を発揮する、といった能力にも影響を与える。
  • 身体的能力を伸ばしたいとき、どうやったら最も効率的に回復できるかを教えたいときには、インターバル・トレーニングの方が、同じ運動を持続的におこなうよりも効果がある。
  • 実力を最大限にかつ持続的に発揮するには、90〜120分ごとに回復のための休憩を入れることが必要である。
情動のエネルギー
  • 実力を最大限に発揮するには、ポジティブで快適な気持ちが呼び起こされていなくてはならない。それは、楽しむ気持ち、挑戦する気持ち、冒険する気持ち、よい機会だと思う気持ちである。
  • ポジティブな情動を動かす鍵となる「筋肉」は、自信*3、自制心(自己管理能力)*4、社会的能力(他人との関係)*5、共感能力*6である。
  • ネガティブな情動は人間が生き残ろうとするときに活躍するが、非常に高くつき、パフォーマンスという点から見ても非効率なエネルギー使用となる。
  • パフォーマンスを支える情動の「筋肉」をうまく動かせるかどうかは、そうした「筋肉」を定期的に動かし、回復の機会をもつというバランスが作り出せているかどうかにかかっている。
  • 楽しい活動、充実した活動、今の自分を肯定してくれる活動*7は、すべて情動の再生・回復の原動力となる。
  • 「忍耐力」「共感」「自信」といった情動の「筋肉」は、上腕二頭筋や三頭筋を鍛えるのと同じ方法で鍛えることができる。今の限界を越える重さを持ち上げ、そのあと回復の時間をとるのである。
頭脳のエネルギー
  • 頭脳のエネルギーのうち、私たちが実力を100パーセント発揮するのに一番関係しているのは「現実的な楽観主義」である。これは「現実を直視する」面と「常にポジティブに目標に向かって取り組む」面という相反するベクトルを内包した考え方である。
  • 頭脳のエネルギー状態を最適にもっていくために大切なのは、「頭脳の準備」「視覚化」「自分に対する前向きな語りかけ」「効果的な時間管理」「創造性」*8といった、頭脳の「筋肉」の働きである。
  • 頭のチャンネルを切り換えると、脳*9の異なる部分が活性化されて創造力が高まる。また、身体を動かすと認識能力が刺激される。
  • 最大限の実力を発揮するために必要な頭脳「筋肉」が足りないときは、自分にとって快適な範囲を超えて働かせ、そのあとで回復をかはることによって計画的に鍛えていく必要がある。
精神のエネルギー
  • 精神面のエネルギーは、人生のあらゆる面において行動のもととなる大事なエネルギーである。情熱、忍耐力、他者と関わっていこうという気持ちを支える「燃料」となる*10
  • 精神のエネルギーは、自分が一番大事に思う価値基準を認識し、私利私欲を超えた使命感をもつことから生まれる*11
  • 精神のエネルギーのもととなる「筋肉」は、生きる姿勢、たとえある程度自分が犠牲になり、苦労することになっても、自分が大事だと思う価値基準に従って生きる勇気と覚悟をもつこと、である。それを補助する「筋肉」としては、情熱、他者に関わっていこうという気持ち、誠実さ*12、正直さ*13、などがある。
  • 精神のエネルギーは「他者へのかかわり」と「自分への適度な思いやり」のバランスをとることで維持されている。

じゃあ具体的にどうするの?って話が続くのですが、そのうち更新します。

*1:「ポジティブな儀式」とは、自分が大切だと思う価値観に裏打ちされ、時間の経過と共に習慣となった行動をいう。

*2:「不安や怒りを鎮めるためには、深い腹式呼吸をするといい」というのは、理論的根拠がある。

*3:「本物であること」「勇気」を求めたジュディスの例は示唆的で、「人が自分をどう見ているか」を気にするのではなく、自分の信念に従って毎日を生きることに集中することか始めるのは重要なことである。「実力相応の成功を収めているのにもかかわらず『自分に実力がないことがいつかばれてしまうのでは』という不安にさいなまれていたジュディス」は多くの人に当てはまる。そして、自分に素直でありながら周囲に気配りすることは可能である。

*4:「サンドイッチ方式」は、まず相手にたいして純粋に肯定的な感想を述べ、次に批判をするが、「説教」ではなく「ディスカッション」として、自分の見解が必ずしも正しいとは限らないという余地を残す。そして最後は相手を激励して締めくくる。これの良い点は、単に寛容かつ新調に振る舞うという意味があるだけでなく、相手が素直に耳を傾けてくれやすいという効果もある。

*5:持続的にいい仕事ができる要因の1つは、職場によい友人が少なくともひとりいることだという。強い友情にはパルスがあり、それは互いに与え合うことであり、語れば聞くということであり、相手を認めたら相手からも同じように認められること、つまり、それは相手との間にリズミカルなやりとりがあることを意味している。

*6:自分の見方とはまったく別の視点から世界を見ることを学ぶには練習と反復が必要である。対処としては、人間関係を深めること。

*7:ジュディスの例における語学ボランティア。彼女はボランティアを通じて、自分を肯定的にとらえられるようになったことで、仕事も含めたあらゆる面にプラスの波及効果を得た。

*8:創造性が最大限に発揮できるかどうかは、集中と解放、思考と忘却、活動と休息という振り子の動きがあるかどうかにかかっている。

*9:脳は「使わないと萎縮し、活発に動くと容量が増える」という筋肉のような特質を持つ。ゆえに、脳を常に働かせていれば、老化による衰えから脳を守ることができる。

*10:人が使えるエネルギーの量は、その人のもつ肉体のエネルギー量によって規定される一方で、自分のもつエネルギーを使おうというモチベーションがうまれるかどうかは、精神面の問題となる。

*11:精神面のエネルギーの消費と回復は、同時に起こる傾向がある。瞑想は心を静めるために高度な集中力を必要とするが、心が広く解き放たれ、人生において何に価値があるのかを深く思い巡らせることができ、ときに喜びさえ感じられる回復の時間でもある。

*12:やると言ったことを、やると言ったときに、きちんとやること。つあまり、約束を確実に実行すること。

*13:自分にも他人にも嘘をつかないこと。

『キヨミズ准教授の法学入門』 木村草太

キヨミズ准教授の法学入門 (星海社新書)

キヨミズ准教授の法学入門 (星海社新書)

  • 法的三段論法は、いろいろな考え方がある中で「こうするべきだ」という判断、つまり規範的判断を共有するための優れた方法。事実関係を見て直感的にどうするべきかを考えるのは、裸の価値判断。
  • 法的な思考というのは、いったん一般的・抽象的な規範を立てて、冷静に議論をしてから、結論を出すというもの。
  • あらゆる行動には、その人なりの効用が必ずあるということになる。つまり「効用」というのは、結論を導くための概念というより、結論を表現するための言葉である。
  • ダメ政治学は、現象の背景に、無理やり政治と権威を見出そうとする。ダメ経済学は、現象を、なんでもかんでも取引で説明する。ダメ社会学は、今それどこじゃないときに、そもそも君の認識は、と小言を言う。ダメ法学は、一律公平を理由に仕事をサボる。
  • 法は言葉にすぎないのに、人間を本当に強く拘束している社会のインフラである。インフラであるから、普通に暮らしていると、それがどんな仕組みで動いているのか、誰が整備しているのか、目に入ってこない。でも法学を勉強しているとそういうことが分かってくる。
  • 良い法解釈学の条件は、内部に矛盾するところがなく(一貫性)、指示する内容が明確であること(明確性)。その解釈を適用して得られる帰結が適切であること。日本語の理解として無理がないこと。他の法律・判例・通説と整合的であること。
  • 法解釈をして主張を組み立てるときには、訴訟戦略として勝ちやすいかどうか、という点とは別に、当事者の主張を忠実に法的言語に翻訳しているか、という点も非常に大事。
  • 「答えを素直に吸収する」という姿勢だけじゃなくて、「俺が素晴らしい解釈論を想像してやるから、ついてこい」という気持ちを持つべき。自分の想像力に自信がないのに法律家になろうとするのは、法律家を必要としている社会の人々に対して失礼というもの。


関連する本

法学入門

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『自分の中に毒を持て』 岡本太郎

  • 人生は積み重ねるべきものではなく、積みへらすべきもの。財産も知識も、蓄えれば蓄えるほど、かえって人間は自在さを失ってしまう。過去の蓄積にこだわると、いつの間か堆積物に埋もれて身動きができなくなる。人生に挑み、本当に生きるには、瞬間瞬間に新しく生まれかわって運命をひらくべき。
  • ふつう自分に忠実だなんていう人に限って、自分を大事にして、自分を破ろうとしない。社会的状況や世間体を考えて自分を守ろうとする。ゆえに、自分に忠実に行きたいなんて考えるのは、むしろいけない。そんな生き方は安易で、甘えがある。ほんとうに生きていくためには自分自身と闘わなければだめ。
  • 自分自身の最大の敵は他人ではなく自分自身。自分をとりまく状況に甘えて自分をごまかしてしまう、そういう誘惑はしょっちゅうある。だから自分をつっぱなして自分と闘えば、逆にほんとうの意味での生き方ができる。
  • あっちを見たりこっちを見たりして、まわりに気をつかいながら、カッコよくイージーに生きようとすると、人生を貫く芯がなくなる。そうじゃなく、これをやったらだめになるんじゃないかということを、まったく自信がなくてもいい、なければなおのこと、死にものぐるいでとにかくぶつかっていけば、情熱や意志がわき起こる。
  • プライドというのは絶対感だ。他に対してプライドをもつということは、他人に基準を置いて自分を考えていることだ。相対的なプライドではなくて、絶対感をもつこと、それが、ほんとうのプライドだ。このことを貫けなかったら、人間として純粋に生きてはいけない。
  • ほんとうに生きるということは、いつも自分は未熟なんだという前提のもとに平気で生きることだ。
  • 「いずれそうします」や「昔はこうだった」なんて言わないこと。過去にこだわったり、未来でごまかすなんて根性では、現在を本当に生きることはできない。
  • 自信なんてものはどうでもいい。そもそも自分を他と比べるから、自信などというものが問題になってくるのだ。他と比較して自分をきめるなどというような卑しいことはやらない。ただ自分の信じていること、正しいと思うことに、わき目もふらず突き進むだけだ。

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残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法

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『7割は課長にさえなれません』 城繁幸

@w_qwertyくんから貰いました。ありがとう。

7割は課長にさえなれません (PHP新書)

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  • フリーターが正社員になれない理由は、企業がフリーターなどの経験者の採用に消極的であるため(特に大手ほどこの傾向は強い)。そして企業がフリーターからの採用に消極的である理由は、日本企業の一般的な賃金体系がいまでも年功序列であり、年齢をベースにしているため*1
  • 貯金好きという国民性からもわかるように、日本人はリスクに対して保守的で、企業家精神が言われることが多く、この傾向は21世紀でも健在で「終身雇用を希望する」新人の割合は過去最高を更新中。日本で起業が少ない理由は、若者が、相変わらず起業が新卒至上主義を捨てておらず、そこでこけるとどうなるか、少し上の就職氷河期世代を間近に見て、よくわかっているため保守化しているからである。つまり若者は企業するとう夢をあきらめて、組織に埋没していく。
  • 日本企業が女性を差別したがる理由は、男性労働者のほうが長期にわたって勤続するからである。さらに、雇用調整手段のひとつとして女性従業員を使う必要もあった。終身雇用があり続けるかぎり、この国の男女格差は永遠に残り続ける。
  • 1990年入社の大卒者で課長以上に昇格している人間が、たったの26パーセントしかいないというデータがある。つまり、約7割の大卒正社員が生涯ヒラ社員。
  • 現在、表向きは年齢を採用基準にしてはならないが、依然としてそれは存在する。かつてこの国には「35歳転職上限説」と言われるものがあったが、それはいまも変わらず存在しつづけている。
  • 「ママ、博士って人を採用したら、国が500万円くれるらしいよ。ところで博士ってどんな悪いことした人なの?」「それはね、勉強しすぎて歳をとってしまった人たちのことよ。しんちゃんは、そうなってはいけませんよ」「うん!わかったよママ!ぼく、博士なんかにはならないよ!」
  • 日本における学歴とは、偏差値証明書のようなもで、要するにポテンシャルの目安として機能し、それをもとに身分制度の枠組みに割り振られていくことになる。「上位カーストへのパスポート」とまではいえないが、「入社試験の受験票」くらいの価値は、いまでも学歴は保っている。
  • 個々数年、コミュニケーション能力や協調性が決まって求められる資質としてあげられるのは、日本企業におけるキャリアパスは、管理職としてのものしか存在しないので、要するにマネージャーの資質を求めている*2わけだ。
  • 「少なくとも自分は平均以上に優秀であるはずだ」と自負する者にとっては、日本企業は割に合わない人生の投資先だ。そして、そう判断して外資をめざしたり、日本企業を三年で辞める若者が増加しているということは、今後の賃金カーブの低下を予想する人間がふえているということだ。もちろん「自分はつねに平均以下だ」と割り切っている人間とっては、終身雇用はいまも変わらず魅力的な精度である。
  • 雇用調整助成金制度*3は一見すると労働者に優しいシステムに思えるが、この制度が優しいのは職に就いている正社員だけだ。彼らがしがみつくのを助けてくれるわけだから、すでに失業中の失業者、これから世に出る若者に対しては、むしろ敷居を引き上げる結果となる。
  • これからの道は二つある。一つ目の道は、基本的には現状維持であり、大きな変化は生じない。あくまでも従来の長期雇用をベースとし、長く勤めれば勤めるほど偉いとされる。二つ目の道は、労働市場の完全な流動化である。具体的には、正社員に対する解雇規制、労働条件の不利益変更規制を緩和し、処遇の柔軟な見直しを可能とする。これによって、3300万人の正社員と、1600万人の非正規雇用労働者が自由競争することになる。
  • 多くの日本人は、日本型雇用によって守られる側ではなく、むしろさまざまなかたちで搾取される側である。それは一見すると目に見えないため、自分が不利益を受けているとは気づいてない人も多い。
  • 「彼ら非正規雇用労働者は、あなた方、中産階級がこれまでどおり生きていくために、クビを切られているのですよ。同情してみせるのはいいが、ではあなた方は彼らのために何ができるのですか?」という根本的疑問を感じたのは筆者だけではないはずだ。
  • 身分制度を変えるには、身分制度に苦しむ人自身が正しい理解をもたなくてはいけない。とくに、まだまだ先の長い若者は、改革の先頭に立つべきだろう。


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若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来 (光文社新書)

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*1:おおよその(賃金)相場は年齢で決まっているため、(たとえば)30歳なのに正社員歴のない個人は「割に合わない」と判断され、敬遠されてしまう。

*2:コミュニケーションの苦手なマネージャーはありえない。

*3:詳しくはここ。「雇用を守るためには 雇用調整助成金」

『君は、世界を迎え撃つ準備ができているか?』 田村耕太郎

君は、世界を迎え撃つ準備ができているか?

君は、世界を迎え撃つ準備ができているか?

  • 人生は準備で大きく左右されるが、これからの時代への準備はいまだかつてないほど人々の運命を変えていくだろう。準備の鉄則は、最悪を想定することであり、最悪を考えることはネガティブではない。むしろ、最悪を想定することこそがポジティブ思考の原点である。
  • 「中国とインドの時代」が新たに来るのではなく、歴史はずっと「中国とインド」であった。特にインドは今世紀最大の人口ボーナスを受ける国であり、21世紀はインドの時代。
  • 世界はあきれるほどの学校名主義*1であり、さらに成績が良くて初めて学歴になる上、本当の学歴は修士以上である。そして自己のリーダーシップを証明しなければならない。
  • これからは「死ぬまで働く時代」であり、自分に投資し自分で自分を養っていく時代である。ゆえに、「年だから」と限界を設定するような考えが最も危険。一生を通じて、新しいことを学び、常にイノベーションを起こせる人的資本であり続けねばならない。健康に投資しろ。
  • 考え抜く力が必要になる。人生で考えるべきは自身の差別化、つまり自分にしかできないことを考え抜くのだ。人の10倍考えること。思考の材料である知識をつけること。知識の中でもカギとなる数字は正確に記憶すること。考えるフレームワーク*2を体得すること。
  • 右脳的感性を伸ばせ。美術館に通ったり、ブランドショップを定期的に覗いたり、優れた建築物を眺めることでセンスを磨こう。
  • 「自立・責任・決断」のもと、自分の強みに立脚した戦略を立てろ。自分が何を知っていて、自分は何が好きで、自分の性格と志向を把握し、身に付けている武器が何があるか考え抜こう。
  • 心に「悪魔の代理人(デビルズ・アドヴォケイト)」=自分の心の中で、自分の意思決定について常に反対意見・問題提起をする別人格を用意しよう。常に納得できるまで反論を加えることで、その決断には説得力と一貫性があると自覚できる。
  • 1日の行動の価値がタイムコストに見合っているか常に考えよう。同様に他人の時間に対してもタイムコストを意識すべきである。時は金(コスト)なりの意識を強く持てば時間の使い方も上手くなり、迷っている時間のコストにも敏感になって決断が早くなるだろう。
  • 多様性の中に身を置き、情報はいくつかのソース*3から得よう。健全な批判精神を持っていないと、つくりこまれたわかりやすやに信じこまされ、日常生活レベルで嘘や詐欺に引っかかってしまう。常に脳はフル回転で。
  • どんどんブレよう。土台さえブレなければ、それを実行するための方法は環境や時代に合わせてブレた方がいい。ただしやみくもにブレるのではなく、「悪魔の代理人」としっかり話をしながら、実行オプションを再検討していくのがいい。
  • どんどん失敗しよう。日本人に足りないのは失敗の経験であり、「失敗に対する恐怖こそが挑戦の敵」「挑戦のない世界に前進はない」がシリコンバレーの哲学である。これからの時代にどこかに追いつくべき正解があるわけではない、熟慮より直感*4で勝負しよう。迷ったら、やれ。
  • 他人を巻き込む力をつけ、さらに他人に巻き込まれる力もつけよう。家族と友人を大切にしよう。フラットな人間関係と宗教への理解も忘れずに。
  • 教養とは膨大な情報の中からどれが本物か、今必要とされているのは何かを選り分ける力である。歴史や思想や経済や科学に横串を刺し、地域の視点を変えて多角的に見ていくことで、時代や地域を超えた真理に近づける。

*1:具体的には、アイビーリーグ・MIT・スタンフォードカルテックバークレー。米国以外ならオックスフォード・ケンブリッジ

*2:演繹法帰納法、仮説検証法。

*3:新聞…フィナンシャル・タイムズウォール・ストリート・ジャーナル、ニューヨーク・タイムズ。雑誌…エコノミスト、ビジネスウィーク、ニューズウィーク。映像…CNN、BBCアルジャジーラ

*4:直感とは、何も考えずに判断することではなく、自らに蓄積したあらゆる経験から判断材料を引き出し、それを瞬時に使って結論を出すことであり、直感の制度を上げるにはまず蓄積を増やすことだ。

『新入社員はなぜ「期待はずれ」なのか』 樋口弘和

新入社員はなぜ「期待はずれ」なのか (光文社新書)

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  • 評価結果に納得感を持たせる一番の方法は、事実をベースに認識を摺り合わせるコミュニケーションの頻度を上げていくこと。
  • 「やってみせ、いって聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」
  • 管理職は頭の良さや実務経験(スキル)よりも、多くの人を巻き込める人的魅力にこそ価値がある。
  • 若者にとって理想の上司像とは、「明るく柔らかいこと」と部下の育成に本気になれる、そもそもおせっかいな性格である人。
  • 甘い夢を語ることと向上心を持つことは違う。

『売春の社会学』 ジャン=ガブリエル・マンシニ

売春の社会史―古代オリエントから現代までと間違えて買った一冊。Amazonで買うときには似てるタイトルに空目しないように気をつけましょう。

売春の社会学 (1964年) (文庫クセジュ)

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  • 洋の東西を問わず、売春が悪と考えられてきたことは確かであるが、それも必要悪と考えられてきたのであって、この点が反省に値する。
  • 売春婦の生活は、従来「ひも」や売春宿の経営者の生活に解き放たれることのないほど密着していた。つまり、どんな売春婦も男を養っていた。
  • 男性の欲求、多かれ少なかれやむを得ざる抑止しがたい欲求、これを満足させるために数えきれぬほど多くの女性が、あらゆる種類の売春仲介業者の残酷で貪欲な手にゆだねられている。仲介業者といっても、「ひも」、売春宿の経営者から酒場の経営者、人身売買業者などが、多くの国々で今なお強い力をもつ社会的諸条件のゆえに存在している。
  • 売春とは、婦女が、金銭を対価として、自由意志で、拘束されること無く、常習的・反復的・かつ不断に性的交渉を行うことである。そして、この行為以外に生活の手段をいっさいもたず、性的交渉の対象は求められればいかなる相手だろうと選択しあるいは拒絶することはなく、喜びでなく、ただ金銭の獲得を本来の目的とする行為である。
  • 売春とは都市という環境に発生し、成長するものであって、さらに限定していえば港市に特有なものである。
  • キリスト教が普及し始めてのちは、性関係に関連する問題は一般に、世俗生活の領域から宗教の領分へと移しかえられてしまい、教会は、その戒律にしたがって結婚による以外のいっさいの性的交渉を禁止し、したがって売春も法律の適用範囲外の事項となり、売春婦は常に宗法によって断罪されることになった。